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2008年5月20日 (火)

ロメオ・ダレール 戦禍なき時代を築く

著者は国連PKO部隊の司令官を務めたカナダ軍人。あの前代未聞の大虐殺劇、ルワンダ大虐殺を察知し、UNAMIR=国連ルワンダ支援団2500名を統率する身として安全保障理事会、国連事務局に状況の打開を訴えるも「価値のないアフリカ」故に無視され、80万人の虐殺を前に無力な日々を強いられたという。帰国後、国際社会の無関心に絶望して自決を図るも一命を取り留め、確固たる正義感に基づく活動を現在も続けている。その強い意志が、東ティモール、シエラレオネで活躍した伊勢崎氏の知性と理念と融合しあい、実に深く強い対談が展開される。
「圧倒される」とは、まさしくこのことだ。

[DDR]
2005年末まで続けられたUNAMSIL=国連シエラレオネ・ミッションは、各軍事派閥組織の非武装化・動員解除と社会復帰プログラムを実践し、新たな軍・警察機構を再編・定着させた。さらに主要産業(ダイヤモンド採掘)の市場と売買ルールを確立するなど、近年に例を見ない大きな成功を収めたPKOだ。その中核事業であるDDRのトップが伊勢崎氏であったことは、同じ日本人として誇りに思った。

DDRは、同じ伊勢崎氏の著書「武装解除」を読んで知った。従来の国家間紛争に代わり、内戦の収束・和平定着が平和維持活動の中心となった現在、小型武器、特に少年兵でも容易に扱えるとされるカラシニコフ小銃の回収と、半ば強制された「兵役」の解除、平和状態への参加のための職業訓練プログラムを一体のものとして進めるDDRは、効果の高い手段に思えた。

[保護する責任]
UNTACの頃からPKO活動には興味があったが、従来のPKOに加えて新しい概念が確立されつつあることを、本書を読んで知った。それが「保護する責任」だ。PKO先進国カナダ政府において研究・提唱された概念であり、ルワンダを経験したダレール氏も、その研究メンバーに名を連ねる。
統治能力の失われた小国においては、反政府勢力との勢力争いに全力を投じ、自国民の保護がないがしろにされがちだ。誰が彼らの人権を護るのか。また国家体制を優先するあまり、人命が軽く扱われることがままある。ウイグル、チベット、チェチェン等が典型だが、当該国は「内政干渉」として他国の意見を封じる傾向がある。この理不尽な「国家主権」に対し、伝統的に国際社会は力を持たないとされてきた。しかし、この新しい概念「保護する責任」は、自国民を保護する能力の欠如、または責任を放棄した国家を前に、国際社会には積極的に人権を保護する責務が生じることを提唱する。
この画期的な概念は、2005年の国連世界サミットで正式に採釈された。ウェストファリア条約以来、絶対的なものとされてきた「国家主権」と「内政不干渉の原則」を凌駕するものであり、国際社会が変わる予感すらある。
このシステムは、ルワンダその他の国における「数百万人レベルの虐殺」を経て成立したものだ。誰かの犠牲の上に何かが変わる構図は、古来から変わらないのか。

[日本の平和維持活動への参加]
アフガニスタンで試行が始まった「地方復興チーム」はこれも新しい試みだが、実は米国とNATOの対立・妥協から生み出されたものらしい。従来のNGOとの軋轢が生じていることも率直に語られる。
湾岸戦争以来、従来の戦争概念では対応できない紛争が続いた結果、政治家、外交官、軍人、専門家を含め、リスクの少ない=効果の低い方法を選択せざるを得ない状況にあり、これを打破する一手段として有望であるとされる。

保護する責任、地方復興チームはP5ではなく、カナダ、ドイツ等の中堅国家こそが主導権を発揮するべき分野であり、日本こそ積極的に参加するべきであるとダレール氏は説く。
対する伊勢崎氏は、先進国と比較しての日本人の「民度」を引き合いに、日本国の国際社会への参加には悲観的、いや絶望的だ。

本文を読み終える前に最終章「インタビューを終えて」に目を通した。伊勢崎氏の迫力ある文章が、僕を震えさせた。そして"PKO記念碑"の件を読み、8月のお盆休みにオタワを訪問することを"即決"した。ついでにニューヨークを再訪し、国連本部と「グランド・ゼロ」を見ることにした。5月11日にチケットは予約済みだ。

NHK 未来への提言
ロメオ・ダレール 戦禍なき時代を築く
著者:ロメオ・ダレール、伊勢崎賢治、NHK出版・2007年9月発行
2008年5月13日読了

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