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2008年7月13日 (日)

敗者の勝利

1939年秋の満州国。ソヴィエト・ロシアとの衝突現場を取材するため、哈爾浜(ハルビン)に派遣されたタイ人新聞社特派員。当時の国際情勢を背景に、上海からの船便で出会ったロシア人女性との恋愛と、人生の意味と理想を描く。

外国人の目を通して描かれる哈爾浜の姿は斬新だ。
五国融和のスローガンにほど遠く、その日暮らしを強いられる満州の土民(中国人)。亡命してきた白系ロシア人たちは、売春同然の職に身を落とし、明日におびえて暮らす。貧困に苦しみながらもソヴィエトを告発するある男の姿は、まさにハードボイルドだ。そんな帝政ロシアの残滓を横目に、正統なる新生ソヴィエト国家を代表する赤色ロシア人。そして、最下層でも中流階級の暮らしを満喫し、すべての上に君臨する日本人。

舞台は大連に移り、ヒロインの関与した、ある事件が発生する。大連警察署長(日本人)の紳士的な描写が好感を持てた。驚愕と精一杯の努力と、絶望と……最終局面での勝利。満足感と共に、船は一路、日本の神戸へ向かう。

「人のほうがそれらの仕事や任務を受け入れるように自らを創造し、自ら進んで仕事や任務に就かなければならない。生まれてきた私たち人間にとって、人生の価値は社会の人々のために仕事をして役立つことにある」

男性としての名誉、自分の誇りと社会への奉仕、人生への高い理想と野心、家庭を持つことの意味、社会進出を始めた女性と社会的評価、職業の誇りと女性への愛の狭間に揺れる男の真摯な姿。
いまから65年も前にこんな作品があったとは驚きだ。

小説のかたちを取りながらも、恐らくは著者の実体験をもとにしたと思われるこの作品、政治的・社会的背景の中に自らの営みを溶け込ませ、読者それぞれの"人生の役割"を意識させるあたりに、著者の筆力を感じた。

アジアの現代文芸 THAILAND 13
CHAICHANA KHONG KHON PHAE
敗者の勝利
著者:セーニー・サオワポン、吉岡みね子(訳)、財団法人大同生命国際文化基金・2004年12月発行
2008年7月13日読了

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