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2008年11月14日 (金)

信号機の壊れた「格差社会」

小泉政権下、これまで長い戦後日本社会の中で培われた"必要な"規制までが次々と取り払われ、無法地帯が出現した。その犯人こそ竹中平蔵氏であると断言する佐高氏。
村上ファンド、ライブドア、木村剛等、きな臭い人物・組織の暗躍劇。最後の人物だけが無傷なのは、竹中チームの一員だったからか。この点は強く追求はされない。
なぜ、村上氏や堀江氏が逮捕されたのか。誰から見ても姑息な手段で利益を上げ、非難されこそすれ、制限のかからなかった現実。その原因は、審判の役目を果たすべき組織、公的機関まで民営化=利益追求を至上命題とする民間企業に変化させてしまったことにあると佐高氏は説く。具体的には東京証券取引所だ。
JRも同例に挙げられる。
じゃぁ、旧来の親方日の丸、労働組合まみれの国鉄の体質で良かったかというと、そうではないだろう。あの組織は解体されてしかるべきだったし、民営化されたからこそ、腰が低くなったわけだし。

作家の雨宮氏はフリーター取材を通じ、ごく一般的なサラリーマンが容易にホームレスに転落する様を紹介する。特に地方から大都市に出てきてトヨタ、キャノンの期間従業員として働き、いきなり会社からも寮からも放逐され、途方に暮れる間もなくホームレス生活へ直行する現実。国や地方自治体の冷酷な対応。それならば、とNPOが立ち上げたセーフティネットが紹介される。

規制改革、構造改革が進められた結果、われわれが目にしているのが年収300万円以下の個人が半数を占める格差社会とされる。森岡氏は最低賃金の世界的格差についても説く。EUの最低賃金は1300円台、アメリカのそれは1000円台、日本はなんと600円台だ。1ヶ月働いても月15万円台では、たしかに生活できない。

"名ばかり管理職"、"ホワイトカラーエグゼンプション制度"の話はキツイ。他人事とは思えない過酷な労働環境が身近にあることは用心するべきかな。

佐高氏と森岡氏、恐らくは雨宮氏も強調したいことは、政治の力だ。日本経団連等が政策をまとめ、政治献金を行い、自民党と公明党が実行する。大義名分のための審議会が設置され、国会での議論もそこそこに法案が成立する。野党は遠くから非難するだけで、何の力もない。これが日本政治の現実であり、お寒い限りだ。
民主党が大勝した参議院選挙。これで少し状況が変わった。自民党は「衆参ねじれ」現象を嘆くが、これこそ民意を反映しやすい、民主主義制度の極意とも言うべきものだな。

信号機の壊れた「格差社会」
著者:佐高信、雨宮処凜、森岡孝二、岩波書店・2008年4月発行
2008年11月11日読了

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