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2009年5月13日 (水)

カンディード

1759年だから、フランス革命が欧州を席巻する前の作品。ドイツの城内で純粋無垢に育てられた若者=カンディードが、王女に恋したことで城主から追放され、様々な冒険と艱難辛苦に出会う物語。

当時のルイ15世による統治を含め、権力者=王侯貴族と僧侶に支配される体制をあからさまに批判する。
さらには、プロイセン対フランスによる7年戦争が民衆にまき散らした惨劇、特に女性の弱い立場が繰り返し描かれる。盛者必衰と女性蔑視の同居する似非騎士道精神、といったところか。

ドイツからオランダ、スペイン、ポルトガルを経てアルゼンチン、パラグアイ、ペルー、エルドラド、スリナム、フランス、イタリア、トルコ、と冒険は続く。

表面は聖人気取りな司祭が、裏では「無類の女好き」であったり、宗教裁判官の傍若無人な狼藉ぶり(気に入らない演説をした男を火あぶりの刑に)等、カソリックに与する人間を容赦なく批判する。
南米エルドラドでは
「へぇ! それじゃお坊さんはいないのですか。教えたり、議論したり、支配したり、陰謀をたくらんだり、意見の違う人間を焼き殺したりする……」
「狂人(ATOKに無いぞ!)にでもならぬ限りそんなことはできないよ」
実に面白かった。

当時のフランスの"教養人"が愛読していた書物を片っ端からこきおろす件が興味深い。決して面白くはないが、教養を保つために後世に残すと主張する常識人対し、「役に立たないから読まない」とバッサリ。実に本質をついている。

数カ所で日本のことが言及されているのは意外だった。18世紀中葉でも、江戸日本が世界に組み込まれていたと思うと、感慨深いものがある。

人生は苦難と退屈に満ちあふれている。それでも悲観せず、働き続けるのが人の道。これが作品に通底するテーマだろう。

Candide
カンディード
著者:ヴォルテール、吉村正一郎(訳)、岩波書店・1956年7月発行
2009年5月13日読了

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