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2010年2月 4日 (木)

ロンドンの二人の女

ロンドン郊外の高級住宅街の住民たちと、同じ地域のフラットを間借りする最底辺の女。
弁護士、開業医、デザイナーに、ギャラリーのオーナー。かたや、年中貧乏な服装を纏い、政府から支給される子供手当すら賭け事に費やす、街の嫌われ者。
スコットランドから友人を訪ねてきた女性弁護士は、その友人=ミズ・ジキルの依頼を聞かされ驚愕する。自分の家を恵まれない女=嫌われ者のミセス・ハイドに譲るための手続きをしろ、と。行き過ぎた個人の慈善行為に賛成できない弁護士は、ミセス・ハイドの素行を調査するが……。

「ポスト・フェミニストの女性が使う手よ。マリリン・モンローの奸智でスターリンの目的を達するってわけね」(p113)

「人間は自由意志を持ち、自分の行動に責任があるとする初期キリスト教徒の立場に戻らない限り、人類に希望はない」(p96)

嵐の夜、高級住宅街を恐怖に陥れた連続暴行魔が殺害され、犯人=ミセス・ハイドであるとその現場を目撃した複数の住民は主張する。それが事実であるにせよ、不可解な謎はミズ・ジキル友人である精神科の医師を狂人に変貌させた。

夫に捨てられ二人の幼子を抱えて生活保護に頼り、周囲に疎んじられ、アパートの家主からも立ち退きを迫られ、精神を病んでいく女性。服用する薬の効果に疑問を持ち、偶然、他の薬を併用したところ……。
華やかな職業を手に自立し、若く闊達で美しく、周囲の受けも良い成功者としての女性。
この境遇の違い、あまりにも惨い近隣住民の仕打ちが、社会的弱者の自分をさらに追い込んでゆく。
最終章に収束する告白は、現代社会における二つの女性の現実をあからさまにする。

幸福に生き続けることの難しさ。
いつか訪れる挫折への心構えを養うには、やはり社会の混濁に身を投じるしかないのだろう。

TWO WOMEN OF LONDON
ロンドンの二人の女 ミズ・ジキルとミセス・ハイドの不思議な事件
著者:エマ・テナント、相原真理子(訳)、白水社・1992年8月発行
2010年2月4日読了

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