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2010年6月 6日 (日)

マネとモダン・パリ 三菱一号館美術館 開館記念展

首都、東京は丸の内に新しい美術館が誕生した。
皇居の真正面、帝国陸軍練兵場の跡地を買い受けた三菱が、経済と文化の中心地の創造をめざし、最初に銀行として1894年に建築されたのが、三菱東京一号館だ。実は東京駅よりも前にできたそうな。
で、老朽化のために1968年に解体されたのが2009年9月に再建築され、「三菱一号館美術館」として2010年4月に公開された。そのこけら落としである「マネとモダン・パリ」を鑑賞してきた。(2010年6月2日)

この展示会は数日前にpen誌で知り、出張の帰りに立ち寄った。見慣れた丸の内。改装中の東京駅南口から丸ビル方面へ出て西へ向かうと、三菱一号館美術館が見えてくる。
1894年のオリジナルの設計図をベースにレンガ造りの外観は斬新だ。

入り口は中庭=丸の内ブリックスクエア側から。薔薇が見事。コインロッカーは100円硬貨専用。お札を崩せる両替機が欲しいところ。

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鑑賞は3Fから。
最初はマネと同時代の人物と建築物の作品からだ。
Auguste-Josegh Magueオーギュスト=ジョセフ・マーニュのヴォードヴィル座(正立面図)とベルトランの1855年万国博覧会の産業館(断面図)が気に入った。
1851年の世界初のロンドン万博に刺激され、パリはじめ欧米各地で開催されることになった万博だが、2010年ではその価値は縮小し、単なる国威発揚の式典になってしまったようだ。マネと関係ないな。次の展示室へ。

1850年代、マネ駆出し時代の作品。当時パリ流行のスペイン趣味に、レアリスムを追求した作品群だ。有名な「死せる闘牛士」や「扇を持つ女(ジャンヌ。デゥヴァルの肖像)」もあるがピンと来ない。
「La Chantease des rues 街の歌い手」はレアリスムの真髄だろう。売れない流しの歌手が店を出る。喜怒哀楽の表情もすでに失われ、偽りの営業スマイルだけが仮面として定着したのか。店内奥の客は歌に興味が無さそうだ。
「Emile Zola エミール・ゾラ」部屋に飾られたベラスケスの絵画と浮世絵、それにどう見ても日本の屏風絵。japonismeの影響が色濃く表れ、興味深い作品だ。

1867年、ナポレオン三世治下で開催されたパリ万博は、それまでのフランス文化の集大成として華やかに演出されたことだろう。すぐ後の激動の時代を予想する者はいなかったのだろうか。
1870年、プロイセンの電撃作戦はパリを破壊した。普仏戦争に続く内戦=パリ・コミューンの攻防はフランス国民の連帯を破壊した。(3月にロンドンで鑑賞したレ・ミゼラブルを思い出したぞ。)
「バリケード」、「肉屋の前の行列、パリ包囲戦1870-1871年」は戦争そのものが題材だ。
その頃の作品では「Berthe Morisot au bouguet de violettes すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」が光っていると感じた。黒色が周りの色彩を引き立ててる。肖像画における現代性と言うのか。

2Fフロアへ。
1870年代前半の戦乱を乗り越え、フランス文化は再び花開く。マネのレアリスムにもますます磨きがかかる。「ラテュイユ親父の店」は実に華やかだ。周りの目を気にせず、カフェで真昼から女を口説く遊び人風の男。都市文化の華やかな一面ではあるが、1879年に発表されたときは物議を醸したんだろうな。
これ、BRUTUS誌2010年6月15日号の表紙ですね。「印象派、実はわかっていません。」

好きな「フォリー=ベルジェールのバー」は習作のみ展示。本物を観たけりゃLondonへ行けってことか。(そうします。)

「Tableaux de La vie pariseienne. パリの人々の生態」をカフェや街角に捉えた活力ある、しかも洗練された作品の数々。この時代のマネは好きだが、晩年の静物画(レモン、猫、草花)は面白くない。

エドガー・ドガの「ル・ペルティエ街のオペラ座の稽古場」が目立たないところに展示されていた。作品も意外と小さい。(A3からB4程度?)
ナヴレの「L'Escalier de l'Opera de Paris パリ、オペラ座の階段」も気に入った。構図と色彩が良い。

1Fの「三菱歴史資料館」には当時の机や勤め人のスーツ等の複製品に加え、勤務光景のパネルが展示されている。西洋のデスクとチェアーに着物姿とスーツ姿が入り交じり、筆記具も万年筆と"筆"が混在している。面白い時代だったんだろうな。

1Fのマネ展ショップで素晴らしいリトグラフを見つけた。当時のポスターの縮小版で絵と文字のバランスが秀逸だ。189,000円也。でも欲しいなぁ。

美術館のパンフレットによると、1880~1890年代の工芸品、グラフィック作品を中心に収蔵するらしく、ロートレックの「ブリュアン」や「ムーラン・ルージュの英国人」、オリオールの「ざわめく森」等、光る作品がコレクションされているそうな! 今後も企画展が予定されており、実に楽しみだ。

三菱一号館美術館 開館記念展Ⅰ
Manet et le Paris moderne
マネとモダン・パリ
http://mimt.jp/
2010年7月25日まで。関東の人は行くべし!

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