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2010年12月31日 (金)

『パンチ』素描集 19世紀のロンドン

本書は、1841年に創刊され、1992年まで刊行された風刺漫画週刊誌、The Punch, or The London Charivari のアンソロジーとして1940年代の飢饉、二つの国民=貧富の差と生活習慣の格差、1951年ロンドン万国博覧会、テームズ川の汚染、急激な鉄道の発展と鉄道株バブル、ロンドンの不衛生さ、女性解放運動とアメリカ女性風俗=ブルーマー旋風、ヴィクトリア時代の女性ファッション=クリノリン・スタイルなどを取り上げ、思わず笑みがこぼれるカートゥーンと小説家サッカレー等の筆による秀逸=辛辣な皮肉文を紹介する。

産業革命により抜きんでた先進工業国となった大英帝国だが、その内部は貧富の差が拡大し、"二つの国民"の言葉も生まれた。"THE SONG OF THE SHIRT シャツの歌"は、社会の底辺で悲しむヒマも与えられないに寡婦の労働哀歌だ。分かる気がする。

"WOMAN'S EMANCIPATION 女性の解放"からは、米国から流入した風習が当時の保守的な英国人に与えたショックの程がわかる。伝統的なヴィクトリア道徳を破壊する"過激派"に対する批判の目が厳しかったことがありありとわかる。

"A SKETCH DURING THE RECENT GALE 最近の強風の中での情景描写"は素直に笑える。(突風でクリノリンと雨傘が逆さになると……。)

個性的な執筆陣と編集者の確執を抑制・転化し、"統合の中の多様性"として有効活用して多彩な誌面を実現した初代編集長、レモン氏の功績を著者は賞賛する。全編集者の反対を押し切って"シャツの歌"を掲載する等、優れたリーダーの実績は70年を経ても残る、ということだな。

『パンチ』素描集 19世紀のロンドン
著者:松村昌家、岩波書店・1994年1月発行
2010年12月30日読了

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