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2011年1月 1日 (土)

マハトマ・ガンディー 現代への挑戦状

ガンディーが、自分の生涯を通して伝えたかったメッセージとは何だったのか? 21世紀のわれわれは彼のメッセージとどう向き合うか? 本書は、その問いの意味を考えるTV講座の教本だ。

・時代を代表する宗教家であると同時に、卓越した政治家であった。世俗主義や"政教分離"の理念を硬直的に捉える日本や先進工業諸国の政策とは逆に、ガンディーは宗教的な理想を政治の中に取り込むことにより、様々な難題を解決しようとした。宗教的な対立や抑圧を越えたところに政治との有機的な繋がりを試み、挑戦し続けた。(14頁)

・広大なインドに偏在する多様な宗教と言語、それらを「越えた」ところで皆が支持できる宗教行為を共有することで理想を現実世界に現出しようとした。それが"塩の行進"だ。この行為は単なる宗教観に留まらず、植民地支配の搾取の構造をあぶり出し、民衆を政治的に目覚めさせることに成功した。そして"糸車"とともに独立を目指すシンボルとなる。(20頁、25頁)

・運動としての"非暴力・非服従"は状態ではなく、その「意志」が重要視される。こうした考え方は西洋の帝国主義からすると逆転の発想であり、イギリスを困惑させた。(33頁)

・人間には限界がある。ガンディーの非暴力運動も宗教対立を越えたインド独立も果たせぬ夢に終わった。しかし、果てしなく時間をかけて、なおかつ未完に終わったことに、意味がある、と著者は説く。改革は既存の制度や秩序に依拠しつつ、時間をかけて地道に行うものだ。急激な革新が最良とは言えない。(51頁)

・かつての日本の5倍から10倍の速度で進行する経済成長と社会環境の変化によって、多くのインド人がアイデンティティの再定義に苦しんでいる。近年のガンディーブームは、伝統の再定義の一環でもある。これは日本でもお馴染みの「和の暮らしの見直し」と同じ、と著者は説く。(74頁)
なるほど、グローバリズムを意識しだした国民は、遅かれ早かれ、地域的、精神的な伝統を残しつつ、世界的な"近代文明人"になる。いまはその過程であると理解する。

で、本書の結論だ。
・人間は不完全な存在であり、できることには限りがある。だから謙虚になり、反省する。人間の究極の限界性は"死"であり、少しでも真っ当な生き方をするべく努力するしかない。理性は万能ではない。時間をかけてでも自分の信じるところに向かって歩み続けるしかない。(82頁、88頁)

1947年のインド独立式典の席にガンディーはいなかった。ムスリムとヒンドゥー教徒の対立する村を裸同然の姿で歩き、和解を説き続けた。そしてヒンドゥー教徒に命を奪われた。彼の人生観から、そのメッセージを少しだけ垣間見ることが出来たように思う。

NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝
マハトマ・ガンディー 現代への挑戦状
著者:中島岳志、日本出版放送協会・2008年12月発行
2010年12月21日読了

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