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2011年4月 2日 (土)

大英博物館 古代ギリシャ展 ~究極の身体、完全なる美~ 神戸市立博物館

The British Museumには2010年の3月と5月に出向いたが、"ギリシャ"を中心に鑑賞したわけではない。どうしてもロゼッタストーンや古代エジプト王朝の遺跡に目が向いてしまう。
で、この『古代ギリシャ展』は、2012年のロンドン・オリンピックに向けてEU、アジア、アメリカ大陸にて開催されているそうな。まだまだ千秋楽(?)まで余裕はあるが、神戸方面へ出向いたついでに鑑賞してきた。(2011年4月1日)

『円盤投げ』(ディスコボロス)(作品58)
Marble statue of a discus thrower (diskobolos)
日本初公開だそうで、特別のブースに展示。360度眺めることの出来る展示は素晴らしい。
右足全体に力を込め、いっぱいに伸ばした筋骨たくましい全身は、まさに芸術だ。右腕の血管の浮き上がる様子まで再現されている。
現物は帝政ローマ時代のコピーらしく、ティボリはハドリアヌス帝の別荘で発見されたとのこと。(コピーは2体。もう一体はヴァチカン美術館。)
なお、オリジナルの行方が気になるが、キリスト教・イスラム教時代に「異教徒の作品」と断定され、破壊されたらしい。
そういえば、東日本大震災のどさくさで官房副長官に就任した人("尖閣"官房長官ね)の大好きな中共の"文化大革命"でも、価値ある歴史文化財の大量破壊が行われたな。ろくでもない!

・ギリシャにおいて、外見上の肉体の完璧さは、内面の道徳的な正しさを反映するとされ、アスリートは特別の意味を持つ。
・女神役の女性一人を例外とし、オリンピアの参加者はギリシャ市民権を持つ男性のみ。すべての競技は全裸(フリ○ン)で行われたんだな。

『コリントス式兜』(作品86)
Bronze helmet of Corinthian type
ギリシャ世界(ローマも)では市民権は兵役義務を伴うものであり、その費用は自前だ。貴族や金持ちはエリートの騎馬隊に参加し、貧乏人は艦隊の船漕ぎの任に就く。大多数を占める中間層の市民は、槍と大型盾、鎧等で武装し、軍団の中心である重装歩兵として参戦する。このヘルメットは重装歩兵が着用するブロンズ製のフルヘルメットで、紀元前510年頃にイタリア半島南部で出土されたものだ。
このヘルメットを被ることにより、個々人の個性は覆い隠され、軍団の一歩兵となるわけか。都市国家間の生死を賭けた戦争では、個人の自由はなく、共同体の利益が最優先される。当然のことか。

『赤像式アンフォラ:出征する兵士』(作品84)
Red-figured amphora
紀元前510年頃にアテネで制作されたものだ。
参戦しようとする重装歩兵の若者と祝福する女神が描かれ、その隣で父親が複雑な表情を浮かべている。1944年頃の日本の地方都市で、若い兵士の送り出される場面が想像される。万歳!を連呼する地域の人々と、送り出す(複雑な思いの)家族。この構図は古今東西で普遍のものってことだな。

『シレノス小像』(作品127)
Bronze figure of Seilenos
太鼓腹のよっぱらい男。およそローマ市民のイメージと異なる彼は、自制心の欠如した堕落した人物と評される。理想のローマ市民(筋骨たくましい肉体を有し、かつ知性的)と対照的な人物として3世紀頃に制作された。
……自分の"メタボなお腹"を再認識し、とても悲しくなった。

『走る少女の小像』(作品39)
Bronze figure of a running girl
競技に参加するのは当時のギリシャ男性の特権だが、スパルタでは違った。
膝上の短いスカートを履き、上半身も右肩から豊かな胸を顕わにし、短距離走(中距離走?)に参加する。
兵士ではないが、女性もスポーツに積極的に参加したことが、この作品に表れている。

『アフロディテ像』(作品43)
Parian marble statue of Aphrodite
数少ないギリシャ女性をモデルにした等身大の像が、このヴィーナス像だ。素晴らしいスタイルには賞賛を送りたい。至高の芸術作品だと思いたいが、現実は……。
(解説パネルによると、入浴しようとする女性を"覗き見る"イメージで、街中の神殿に設置されたとか。いまなら抗議の声がネット上で吹き荒れるだろうな。)

『役者の小像』(作品132)
Terracotta figure of an actor
当然のことだが、ギリシャ、ローマ世界に暮らすは筋骨たくましい典型的な"ローマ市民"だけではない。なんらかの理由でハンディキャップを持つ人々も当然、毎日を生きていかねばならない。
社会的地位の低い"喜劇俳優"として訓練を重ね、わずかなギャラを芝居と踊りの報酬として受け取る。あるいは"拳闘士"として、金持ちの宴席の余興を血で彩るか。
いずれにせよ、限られた職業で生きる彼等の姿が芸術作品として残されていたことは、ひとつの意義でもあるのだろう。

・で、"男と男"……。
当時の芸術作品にも残っていることから、ギリシャでは"男女間の愛"は大事にされず、「壮年の男が主導権を取り、若い男子を恋の相手とする」ことが容認、いや、推奨されていたんだな……。なるほど、キリスト教から見たら"異端"だわ。いやはや、なんとも。

神戸市立博物館:古代ギリシャ展
http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/museum/tokuten/2010_05greek.html
2011年6月12日まで!

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