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2011年8月 6日 (土)

断髪のモダンガール 42人の大正快女伝 森まゆみ

明治末期から大正期、そして大正文化の爛熟した昭和初期にかけて活躍した42人のアクティブな女性の群雄伝であり本書は、一方で、昭和後期に至る女性の正当な権利の獲得までの物語とも言える。興味深く読んだ。

現代ならセミ・ロングカットに相当する"断髪"スタイルは「結婚せず家庭に入らず職業を持ち自立します」との宣言に等しかったそうな。当時の保守的な社会の中で洋装(当時はほとんど男装)に身を包み、靴を履き着帽して男性中心社会を生き抜くには、それ相当の覚悟が要ったと思う。

自立した女性として成功するには、やはり上京して大正文化=都市文化に触れることが必要。その上で上級学校を経た者が文筆家=編集者、作家、新聞記者として成功を収めるパターンのようだ。もちろんカフェやレストランの女給、工場での単純作業に従事しながら文芸を志し大成した者もいるし、十代から"天才少女作家"として華々しくデビューした者も少なからずいたし、名を残せず帰郷した者もいる。

・現在でも第一線で通用する"タフ"な女性たち。中條(宮本)百合子、平塚らいてう、宇野千代……、圧倒された!
・与謝野晶子は明治の歌人だと思っていた。実はスゴイ人だった。
・野溝七生子の"女学生時代の生態"は実に面白い。野広実由「うちの姉様」の主人公、涼音嬢を彷彿させるな。
・石垣綾子。家庭環境が人格を形成する、その見本のような人だ。戦間期の反日本活動は誉められたものではないが「日本の主婦は非活動的だ」との戦後の主張は斬新だったろうな。

・当時の女学校のレベルの高さがうかがえる。英語、仏語、露語……。まぁ女学校や日本女子大学校、東京女子大学に通える者は少数のエリートだっただろうが。
・ロシア・シベリア鉄道を経由しての洋行は、とんでもなく贅沢な行為だったことがわかる。(裕福な旧家が旅費を工面するのに借金するくだりがある。)
・1927年(昭和2年)のニューヨークには、すでに一千人もの日本人女性がいたらしい。(p335)

・大正・昭和初期にrubashka ルパシカなるロシア男性の上衣が流行したことがわかる。「そのころ流行しだした先端女性の真似で」断髪した女性はルパシカを着用した無職男性と同棲し、街を闊歩する、か。(p293)
・明治からの封建的な社会への反動として"アナーキズム"に傾倒するインテリたち。「女性の『解放』はまず性的な事柄からはじまる」(p293)にあるように、男性関係は実に派手だ。ニューヨークで言う"フラッパー"ってヤツか。巷言われる"性の乱れ"は実は男性の幻想で、大正デモクラシーの頃からあまり変わっていないのか?

帝劇、三越、銀座のカフェ、ホテル、地下鉄、自動車、新住宅。帝都を闊歩する洋装のモダンボーイ、モダンガール……。大正時代に興味が沸き、"1920年代のモダンガール"を意識して読み始めたのだが、少し違った。第一章「洋行したモダンガール」や第五章「芸で立つ」あたりがイメージに近いかな、

(^^)
ちなみに「異国迷路のクロワーゼ」が最近のお気に入りです。
http://www.ikokumeiro.com/
19世紀末、百貨店全盛のパリ。その影で廃れゆく商店街、ギャルリ・ド・ロアに着物姿の日本人少女がやって来た。その名はYune 湯音……。
サンテレビで絶賛放映中。スゴク面白いですぞ!

断髪のモダンガール 42人の大正快女伝
著者:森まゆみ、文藝春秋・2008年4月発行
2011年8月6日読了

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