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2011年12月24日 (土)

3.11 死に神に突き飛ばされる 加藤典洋

情報の洪水に流されず、自分の頭で考え抜くことの重要さ。それを本書は教えてくれた。

「死に神に突き飛ばされる」と「祈念と国策」の二章から構成される。書き下ろされた後者の内容は圧倒だ。


なぜ、東京電力に対する批判は高まらないのか?
「広告費が足かせとなって、新聞・メディアが自由に批判的な記事が書けないというのは、戦時中に言論統制が足かせとなって、新聞が自由に批判的な記事を載せられなかったというのと同じ構造の問題である」か、これはわかる。
さらに著者は現代ジャーナリズムの根源的な問題を説く。それは新聞とテレビが「読者、視聴者に政治的な課題を『提示』し、己の考えを明示し、議論の展開を促すべきところ、それができ」ずに、代わりに「大震災、原発災害の被災者の…現実、…挿話といった特異な記事で、次から次へと」紙面が埋められ、これが"報道"と称される。それは能力的な問題ではない。「事態を踏み込んで報道しないことが新聞社の意思に基づき、行われて」おり、その理由こそ「社会的に重要な動向(=原発に対する疑念)に対する既得権益の擁護」であり、「この種の情報の遮断」が行われている、と著者は断罪する。(p170)

「いま起こっているのは、これら政官財一勢力による文民の意思の押し込め」であり、「文民統制(シビリアンコントロール)が求められるとしたら、自衛隊に対してというよりも、これら政官財の既得権益共同体に対してであろう」(p55)
よく米国の軍産複合体が問題とされるが、この国の『既得権益共同体』にマスメディアが取り込まれている現実を忘れないようにしよう。


菅首相に対する非難の大合唱も、いま冷静になってみれば、マスコミに誘導されていたんだな。
いずれ、当局の監視の目を逃れるために、表現を曖昧にしたり、××や○○と表記しなければならない時代がやってくるのかもしれないな。
……中共支配下の中国とどこが変わらないんだ?


"原子力の平和利用"に隠された問題点、すなわち「どれだけ予算がかかっても、国家の『技術抑止』維持のために核燃料サイクルを推進するという軍事目的」を含む国家意志が存在し、しかもそれが裏に隠れたままの状態にあることを、原子力研究会の論文を引用しながら、著者は告発する。(p150)

長い時間をかけての脱原発。著者の立場は明快だ。

が……。
原子力は本質的に危険を内包する。それでも、巨大エネルギー源としての魅力からは逃れられないし、昭和の冷戦を経験した世代の一人として、その代価の一つでさえある日本の核"技術抑止"力を放棄することは選択したくない。
この点、本書中で幾度も著者が批判する寺島実郎氏の立場を僕は支持したい。

3.11 死に神に突き飛ばされる
著者:加藤典洋、岩波書店・2011年11月発行
2011年12月23日読了

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