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2011年12月18日 (日)

カインの末裔/クララの出家 有島武郎

■カインの末裔
大正6年の北海道西部、凄まじい吹雪の寒村に、野生むき出しの小作農、広岡仁右衛門とその家族が辿り着くところから物語は始まる。

あてがわれた住居小屋の内部は冷たく、古むしろと藁の布団がすべて。吹雪に遮られるだけマシというもの。赤坊は堅くなりかかった歯茎で、母の枯れた乳房を噛む。泣く。母は3枚の塩煎餅を大事そうに噛み、我が子に口移しを試みる。夫は暴力で塩煎餅を奪い、自分のものにする。家族の食料は尽きる。
闇の中の深い貧しさ!

けんか腰の仁右衛門の巨躯-身長180センチ-は虚弱な他の小作人を圧倒し、ののしりと暴力で文句を言わせない。常態化したドメスティック・ヴァイオレンスは目を背けたくなる。

仕事熱心だがルールを破り、自分勝手に生きる仁右衛門は、やがて孤立する。
農場主の妾が暴行される事件は決定的だ。

長雨と日照りは不作をもたらす。
「自然に抵抗し切れない失望の声が、黙りこくった農夫の姿から叫ばれた」(p49)

赤ん坊も死ぬ。仁右衛門と妻は吹雪の中、追い出されるように村を出る……。

■クララの出家
1212年3月18日、イタリア半島中部の自治都市Assisi アッシジにて18歳の貴族令嬢クララが出家、修道女になる夜明けから夜更けまでの一日を描く。
黄金色の美しい髪を持つ麗しい彼女こそ、Ordo Fratrum Minorum フランシスコ修道会を創立した聖フランシスコの最初の女弟子であり、後にClala Assisiensis アッシジのクララと尊称され、サン・ダミアーノ修道院の院長となる人だ。

人であることを捨て去る決意の後、だがしかし「瀕死者がこの世に最後の執着を感ずるようにきびしく烈しく父母や妹を思い」、親しんだ"この世界"への未練に涙を潤ませるシーンは、あまりにも人間的で、暖かいものがある。

これも昭和6年の作品。詳細な13世紀カソリック都市の情景描写と宗教観は、自身キリスト教に帰依した著者ならではのものだろう。


それにしても有島武郎の表現力豊かなこと。発表当時にセンセーションを巻き起こしたらしいが、さもありなん。女性編集者との心中を含め、常に世間の話題の中心にいたことも窺えるし、内容の濃い人生だったろうと思う。

カインの末裔/クララの出家
著者:有島武郎、岩波書店・1940年5月発行
2011年12月18日読了

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