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2011年12月 5日 (月)

半島を出よ 村上龍

最初に手に取ったのは出版された2005年の7月。北朝鮮の動向が取り沙汰されていたこともあり、詳細に記された北朝鮮軍兵士の姿に興味を抱いた。
今回は、政治も経済も社会も崩壊した日本に観点を据えて読んだ。

2011年末の日本は、何もかも本書出版時より悪化した。経済収縮はますます進み、歴代政権が連呼する"景気対策"も空しく響くばかりだ。国債暴落に端を発する"日本経済の破綻"が語られて久しいが、最近の経済誌でも再びクローズアップされ、明日にも現実となりそうな気配だ。
いつまでも狼少年でいられるはずがない。


経済が崩壊すると、何が起こりうるのか。
円が売られ、国債と株が暴落し、銀行が閉鎖される。国民生活より国家財政が優先されるから、預金封鎖は必然となる。外貨と円の換金も制限され、海外資産も凍結される。消費税率も大幅にアップし、国民の生活は破綻に追いやられる。
優良企業が海外に逃げ出し、大都市を中心に浮浪者が爆発的に増える。犯罪も増える。政治家と官僚に向けられる憎悪は凄まじく、霞ヶ関でテロが頻発する。

「経済が衰退した国は国際的な発言力を失う。…戦後一貫して経済力をバックに外交を進めてきたから、破綻同様の国家財政と産業の衰退は外交面で手持ちのカードをすべて失うに等しかった」(上p281)

世界中の厄介者になりつつある日本。「アメリカと離反し、東アジアで孤立し、中国と敵対して、日本は平和と繁栄を守ることができるだろうか」(上p283)

その最中、北朝鮮による北九州侵攻計画が実行に移される……。


問題が発生する、あるいはその兆候に気づかず、突如その事態に襲われる。対処せずに放置すれば問題は悪化するのが世の常だが、これが国政の中枢で平然と行われるのだ。

物語中、ある閣僚が罷免される。突如部外者となった彼は、かえって冷静に物事を見ることができる。「内部にいては、何もわからない」のだ。
「典型的な日本的集団といえる円卓の意思決定の過程の異様さがよくわかる」し、「もっとも重要なことから逃げているようにも見える」。(上p288,p290,p309)

最優先事項を決めずに場当たり的に、しかし一所懸命に対処する物語中の政府の姿は滑稽だし、現実の政府もそうであることは容易に想像が付く。そして、これが僕を含む日本全体の日常的な姿かと思うと恐ろしくもなる。


責任と権限を明確にすることの重要性を、著者は大阪府警SAT部隊の北朝鮮テロリスト襲撃作戦を題材に明示する。
「決定権と責任の所在が曖昧なまま、すでに意味を失っている計画が実行に移される」(上p360)
部隊派遣、作戦立案、実行に至る過程を「把握して、決定を下す責任者がどこにも存在しなかった。…誰が作戦の実行や中止を決めるのか…決められていなかった。…前の戦争のインパールやガダルカナルと同じじゃないか」(下p106,p107)


福岡占領の是認。国際的な暗黙が、日本をますます孤立へと追いやる。。
「国際法で侵略が禁じられてるっていったって、要は国際社会の平和を乱さなければいいわけで」(下p114)

「この世の中には二種類の人間しかいない」(下p283)
こつこつと作る人間と、旧来のシステムと悪の砦を破壊する人間。マジョリティに属さない後者が、本格的な北朝鮮侵攻作戦を防止するのだが、その作戦は実に大胆だ。

著者の凄まじい想像力に圧倒されながら一気読みし、深い余韻を胸に書棚に戻した。

半島を出よ(上巻、下巻)
著者:村上龍、幻冬舎・2005年3月発行
2011年12月5日再読了

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