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2012年1月 3日 (火)

昔日の客 関口良雄

昭和30年代、多数の文人・著名人と交流を持った古書店、山王書房主人の随筆集。
先日、野呂邦暢「夕暮れの緑の光」を読んで本書の存在を知ったのだが、復刊書が神戸・元町は海文堂書店に平積みされているのを見て購入した。

宇野千代、尾崎一雄、野呂邦暢、三島由紀夫、室生犀星など戦後著名文学人との交流や、書店経営にまつわるアレコレ、若き日のロマンスなど多彩なエピソードが開陳されるが、やはり書籍に対する愛情が頁の端々からあふれ出てくる。

本当の本好き。

「息つぐ間もない世相の中に生きていると…記憶は永久に…砂丘に埋もれ、…海岸の波間に沈んでしまうかもしれない。…は、眠っていたスワンの娘の記憶を呼び起こしてくれた。それは私の人生に無用なものかも知れない。が無用の中にこそ、言い知れぬ味わいがひそんでいるものだと思う」(p156 スワンの娘)

尾崎一雄と一読者である少女に関する随想。失明の危機から脱した少女が真っ先に実行したことが感慨深い。「情熱というものである」(p142 可愛い愛読者) 本当に。

お寺の本堂で行われた知人の結婚式と披露宴に出席する。「思うに真理の探究というものは、俗の中に身を処していなければ…」(p91 某月某日)
濁世に身を置き、人類遺産である書物を通じて過去の人物と対話する、あるいは時空を超越して歴史上の出来事に身を重ね、自らの処世を考究する。
これぞ読書の楽しみであると、新年を迎えて再認識した次第。

昔日の客
著者:関口良雄、夏葉社・2010年10月発行
2012年1月3日読了

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