« 五月の霜 アントニア・ホワイト | トップページ | 名画 絶世の美女 平松洋 »

2012年2月17日 (金)

絵はがきの旅 歴史の旅 中川浩一

著者蒐集による絵葉書を題材にした、実に旅心をくすぐるエッセイ集。

第一部ではロンドン、モナコ、ロマンチック街道、ハイデルベルク、旧ソ連圏のシルクロードを、絵葉書と夏目漱石、森鴎外、コナン・ドイルらの文学作品を関連づけて解説する。
・鴎外『うたかたの記』の舞台となったスタルンベルク湖とバイエリッシャーホテル。ホテルの新旧の絵葉書の比較から、100年前と変わらぬ姿で営業されていることがわかる。古い建築物を遺産として保持活用する思想は、古くなった欧州車にノスタルジーとさらなる愛着が生じる感覚に通じると思う。
同作品に登場するライン渓谷の伝説"ローレライ"の地も解説される。
主人公の画工、巨勢にモデル(ミュンヘン滞在日本人)がいたとは知らなかった。
・シャーロック・ホームズ長編『四つの署名』と漱石留学、倫敦塔見物にまつわる解説は楽しめた。

第二部では空港、オムニバス(バス)、ホテル、駅前旅館、海峡連絡船など、19世紀以降の世界各地と明治以降の日本で発行された絵葉書と照らし合わせながら、その発祥と発展の度合いをみる。
・明治から昭和初期にかけての東京の交通事情に関する解説本はよく見かけるが、地方(長野、浜松、山梨、旭川、阿蘇)の道路と交通についての解説は新鮮だった。明治・大正期の先人のエネルギーには感服させられるな。
・鉄道の発達が地方に観光客を運ぶのは良かったが、鉄道高速化は"日帰り客"を増やし、観光地の旅館業に深刻な影響を及ぼし始めた。なるほど、当時の絵葉書から"鉄道&宿泊割引"、"鉄道&食事割引"などの新商品が開発されたのも、この頃のことだとわかる。
・マンチェスター~リヴァプール間に世界初の都市間旅客鉄道が開通したのは1830年だが、早くも10年後にはロンドンでステーション・ホテルが開業した。
いまも営業しているセント・パンクラス駅ホテルやチャリング・クロス駅ホテルには、いつか宿泊したいと思っている。
・sea bathing 海水浴の発祥地は、ドーヴァー海峡に面するブライトン。病気療養が当初の目的だったが上流階層が大挙押し寄せ、一大リゾート地となった。
ついでに書いてしまうと、世界初の電車Volk's Electric Railwayも1887年にこの地に開通したそうな。2012年も健在なのが嬉しい。

明治42年にケルンから著者の祖父宛に届いた絵葉書にツェッペリン飛行船が描かれている。1909年だからLZ4かLZ5あたりだろうか。気になるな。

絵はがきの旅 歴史の旅
著者:中川浩一、原書房・1990年3月発行
2012年2月14日読了

« 五月の霜 アントニア・ホワイト | トップページ | 名画 絶世の美女 平松洋 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134563/54009263

この記事へのトラックバック一覧です: 絵はがきの旅 歴史の旅 中川浩一:

« 五月の霜 アントニア・ホワイト | トップページ | 名画 絶世の美女 平松洋 »

フォト

他のアカウント

おすすめ本

見て下さいね!

  • BMW Japan
    愛車の2001年式E46 320i Mスポーツは快調ですが、E90 3シリーズクーペも魅力的です! 335i、誰か買ってくれないかな~~
  • United Nations Peacekeeping
    現代のアメリカ帝国の一方的かつ傲慢な「強者の論理」がまかり通る世の中ですが、国連経済社会理事会はまだまだ機能しています。そしてPKOの理念もまた!
  • 『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版
    日本に存在しないものの一つが「クオリティ・ペーパー」だ。この大陸欧州(コンチネンタル)の知性が、日本語で堪能できるのです! インターネッット様々ですね。
  • BBC NEWS | News Front Page
    英連邦の残滓は資産でもあります。日本のメディアにほとんど現れることのないアフリカ、南アジアの記事が豊富です。
無料ブログはココログ