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2012年3月 6日 (火)

レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ 貴重写真に見る激動と創造の時代 海野弘

産業革命を経て都市への人口集中が加速し、革命と戦争を引き起こしつつ新しい文化を築いた19世紀ヨーロッパ。本書は1850年代以降に普及した新しいメディア=写真をふんだんに使い、ベル・エポック期ヨーロッパの社会と都市文化を俯瞰する。

一般大衆が権力に目覚める黎明期であり、女性の社会への進出を目前にした、実に面白い時代だと思う。

・都市の顔、すなわち大通りに面するファサードができれば必然的に裏通りもできる。地上と地下、あるいは光と影の"都市の二重性"がさらに地方住民を呼び寄せ、都市を遊歩するボヘミアンが登場し、都市は複雑さを増してゆく。ダイナミックに動く「流れてゆく都市風景が出現する」(p23)

・各国王室といえども流転する運命には逆らえない。ハプスブルグ家の末期は読んでいても辛い。暗殺者の情報を事前に入手していたにも関わらずフェルデナンド大公がサラエヴォへ向かった理由を知れば、彼が人生最後の時点で幸福感に包まれていたことが想像できよう。(p76)

・服飾モードはパリが他を圧倒している。王侯貴族は流行デザイナーを御用達にしているが、都市居住の一般大衆もディスプレイや雑誌記事などにより、流行を楽しめたようだ。

・極上のエンターテインメント、オペラの黄金時代に好んでテーマとされた「運命の女」たち。ロマンチシズムと偽善性の並立する時代に出現した束の間のあだ花、高級娼婦の生活も興味深い。(p183)

・現在文明に連なる「世界を変えた発明」(中本繁実)は興味深いが記述が物足りない。もう少し内容を充実させてほしかった。

できれば同じシリーズ構成で、戦間期ヨーロッパを対象に一冊発行されることを願う。

レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ 貴重写真に見る激動と創造の時代
著者:海野弘 他、山川出版社・2010年12月発行
2012年3月5日読了

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