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2012年7月17日 (火)

ケイト・グリーナウェイ 川端有子 [読書記]

ヴィクトリア時代のロンドンにグリーナウェイ・ドレス旋風を巻き起こした挿絵画家、ケイト・グリーナウェイの作品集。その魅力と彼女の生涯、時代背景、影響を与え合った芸術家との交流について述べられる。

彼女の絵本の一大特徴、それは素朴で愛らしい子供たちの姿にある。どこか懐かしいイングランドの田舎の庭園で、牧場で天子のような振る舞いを見せる少年少女たち。イギリスの失われた理想の世界を見事に描いた絵本は人々の琴線に触れ、むしろ大人たちが買い求めたそうな。(p56)

幻想の光景を淡い色彩で表現した木口木版の絵本はベストセラーとなり、彼女の絵は雑誌や広告に大々的に掲載され、ヨーロッパとアメリカの子供服を変えたとまで言われる。一個人のイメージとデザインが世を席巻した初期の例であり、現代日本のコスプレを想起させてくれ、興味深い。

整形庭園との関係について述べられた箇所は興味深い(p64)。なるほど、常に危険(な外部)と接する大人の、その実、安心と固有空間(自分だけの世界)を求める深層心理を巧に捉えたことも、グリーナウェイの絵本がベストセラーとなった理由のひとつか。

古風で、優雅で、牧歌的。ここにグリーナウェイ・ドレスの成功の秘密があると述べられている。世界一の産業国として繁栄する一方、殺伐とした社会システムに苦しむ庶民は、人間的な触れ合いのあった古き良き時代を懐かしく思い、憧れる。(p44)
この件を読んで、僕は数年前の昭和30年代ブームを思い出した。都市化、工業化を成し遂げた末に次の目標を見失いつつある、そんな時代に郷愁が生まれる。社会の老化現象のはじまり。その成熟性の上に新しい社会が育まれれば良いのだが。

Kate Greenaway
ケイト・グリーナウェイ ヴィクトリア朝を描いた絵本作家
編著者:川端有子、河出書房新社・2012年3月発行
2012年7月16日読了

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