« マイトレイ エリアーデ [読書記] | トップページ | チャイナ・インベイジョン 中国日本侵蝕 柴田哲孝 [読書記] »

2013年2月19日 (火)

メイカーズ クリス・アンダーソン [読書記]

先日、隣席の新入社員(25歳)との雑談で電子辞書が話題となった。伝統的な分厚い辞書なんて学生時代から使っていないとのこと。まぁ、幼少よりPCや携帯電話が存在した世代には当たり前のことなんだろう。
僕自身、レガシーな紙の英和辞書なんて、もう何年も開いていない。
電子辞書は便利だな~、と思っていたのも束の間。昨今はマウスを置くだけで知らない単語を和訳してくれるGoogleツールバーのおかげで、BBCやAl Jazeeraの英文WEBページを読むのが楽になった。

"インターネット・ビジネス"や"eコマース"といった言葉は昔話となり、いまやWEBを主軸とするインフラは月刻みで進化している。本書は、この動きがリアルな「もの作り」に波及し、製造業の世界を変えつつあることを示してくれる。


第2章「新産業革命」の内容は衝撃的だ。
・オンラインでの共有が定着したことが、ウェブ時代の根本的な変化の一つ。これからの10年は"シェア"がリアルな製造業に本格的に展開される。
・メイカームーブメント。もの作りの「デジタル化」と「オープンハードウェア」の二つの潮流が本格的になってきた。
・もの作りのプロセスにウェブ文化とのコラボレーションが持ち込まれた「デスクトップ・ファブリケーション」は従来のDIYをはるかに超える規模で拡がり、小規模でもグローバルになれる力を生み出し、製造業を再構築する。(p30)
オープンハードウェア+カスタマイズ。なるほど、日常品、身の回りの電子機器を、好みのデザイン、機能を付加して1台だけ作る、あるいは作ってもらうことが当たり前となるのか。
・モノが人に"ツイート"するしくみは、なるほど、面白いぞ。(p42)
既存の家電メーカに代わり、「オープンハードウェア」かつ「非プロプライエタリ」を特徴とする新興メーカのオリジナル品が勢いを増すのは確実だな。

ここで疑問が生起する。知的財産の管理はどうするのか、ノウハウをすべて公開するやり方は、既存の製造業のあり方とマッチしないのではないか。いや、ここで従来型企業モデルを持ち出すのは古いおじさん思考なのだろうか。
このあたりの方向性も書かれており(p45,141,272)、昨今のデジタルコピーと著作権の衝突と同様に、明らかに従来型知的所有権と異なる考えが広まるように思われる。民主化と言えば聞こえがよいが、果たして法的決着はどうなるのか。今後、製造業のあり方まで含めて議論が沸騰することだろう。


第3章では「メイカー的な小企業」の姿が提示される。新しい時代の家内工業への回帰。コモディティ市場ではなく、数千人のニッチ市場においてイノベーションで競争する自分だけのマイクロブランド、か。なるほど。(p68)


第8章では「人材のロングテール」と「先端の製造業が今後例外なく向かってゆく、デジタルな製造技術への方向性」(p184)が示される。電気自動車をめぐる動きは加速してきたし、主要幹線道路での自動運転すら視野に入ってきた。現在の愛車は最後の内燃機関車になりそうだな。


エピローグではずばり「製造業の未来」が描かれる。
「グローバリゼーションとコミュニケーションは世界をフラット化し、低賃金の途上国へと製造業を引きつけた」が、オートメーションの進化により、世界は「ふたたびフラット化しつつある」(p288)。
21世紀のもの作り経済の形(p290)。秀逸な訳者あとがき(p310)と併せ読むと、日本を含む先進国の製造業のモデルが見えてくる。


第三次産業革命は始まったばかりで、情報技術が製造業のあり方を変える時代のただ中にある。僕も情報のロングテールのありがたさを享受しているひとりだが、「モノのロングテール」が生活を変える時代が、すぐそこにきているのか。(p82)

実は5年前に職場へ3Dプリンタ(40万円)が導入され、僕もある部品(製品化には至らなかったが)を試作したことがある。正直、高品質の樹脂成型品とは比較できないが、これはこれでアリだと思った。試作検証には十分だし、なんと言ってもすぐに目の前で作ることのできることに意義があると思った。この面白い工作機械が、たとえば全国の小中学校に導入されるとする。若い才能と横溢な創造性が刺激され、新しい何かが生み出されることを思うと、ワクワクさせられるな。

MAKERS : The New Industrial Revolution
メイカーズ 21世紀の産業革命が始まる
著者:CHRIS ANDERSON、関美和(訳)、NHK出版・2012年10月発行
2013年2月17日読了

« マイトレイ エリアーデ [読書記] | トップページ | チャイナ・インベイジョン 中国日本侵蝕 柴田哲孝 [読書記] »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134563/56798387

この記事へのトラックバック一覧です: メイカーズ クリス・アンダーソン [読書記]:

« マイトレイ エリアーデ [読書記] | トップページ | チャイナ・インベイジョン 中国日本侵蝕 柴田哲孝 [読書記] »

フォト

他のアカウント

おすすめ本

見て下さいね!

  • BMW Japan
    愛車の2001年式E46 320i Mスポーツは快調ですが、E90 3シリーズクーペも魅力的です! 335i、誰か買ってくれないかな~~
  • United Nations Peacekeeping
    現代のアメリカ帝国の一方的かつ傲慢な「強者の論理」がまかり通る世の中ですが、国連経済社会理事会はまだまだ機能しています。そしてPKOの理念もまた!
  • 『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版
    日本に存在しないものの一つが「クオリティ・ペーパー」だ。この大陸欧州(コンチネンタル)の知性が、日本語で堪能できるのです! インターネッット様々ですね。
  • BBC NEWS | News Front Page
    英連邦の残滓は資産でもあります。日本のメディアにほとんど現れることのないアフリカ、南アジアの記事が豊富です。
無料ブログはココログ