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2014年9月18日 (木)

アメリカ<帝国>の現在 ハルトゥーニアン [読書記]

全世界を統治しながら、その民意を反映するかのように振る舞う怪物、アメリカ帝国。
本書は、第二次世界大戦後に姿を現し、冷戦期に肥大化した「近代化」の理論的経緯を追いつつ、冷戦終了後に「帝国主義」の姿を隠そうとしなくなったアメリカ帝国の現代的意味が語られる。

・現代の世界帝国的秩序は、911テロによる対テロリスト戦争でも、アメリカによるイラク侵略でもなく、冷戦の終了が発端である。

・冷戦初期に脱植民地化を果たした膨大な新興国。活力を欠き静止状態にある彼らの伝統社会を、躍動的でスピード感に満ちた近代社会へと移行させる変革概念。これが近代化であり、社会科学である。それはアメリカ資本主義の拡大のために資するため、プレモダンな後進社会を"改造=西洋化を加速"するために生み出された。

・近代化は民主化に非ず。政治的リーダーを育成し、いかに第一世界=アメリカ資本主義の経済的発展に寄与し、第二世界=ソビエト連邦の影響を排除させるかを模索するモデルでもあった。ゆえに過度な民主化はときに政治近代化の障害とされ、権威主義的権力形態をすら支持するようになる(p92)。

・本書にはたびたび「近代化モデルの成功例」として日本への言及がある。半植民地から共産主義革命の餌食となった中国(p109)、植民地から脆弱な民主主義国となったインドと並べられ、日本は戦前の「文明化」を早いペースで成し遂げたものの、軍国主義とその頓挫を経験し、アメリカの占領政策によって、真の近代国家へと飛躍したケースとされる。この特殊な事例ですら、強引に他の途上国の発展の参考になるとされ、多大な研究がなされてきたことが述べられる。

・だが「帝国的介入」の目的は「政体転換」であり(p104)、その意味で戦後日本はアメリカの意図する世界の近代化政策の成功例と言えよう。

・その日本を例に、現代の帝国主義は「過剰な領土的野心を持たないものへ変質した植民地主義」であることが明確にされる(p117)。本書に記述はないが、リップルウッドによる新生銀行にからむ事例、金融危機の演出と搾取などは、新しい植民地主義の姿をありありと示してくれよう。

「帝国の統治形態は国際統治というモデルをなし、それゆえグローバリゼーションを牽引する力として作用する」(p160)

オリジナルが著されたのはイラク戦争中の2004年であるが、新たに付加された日本語版における最新の序文と訳者の解説文により、2014年現在、本書の内容はますます正鵠を得つつあると言えよう。

グローバリゼーション=現代の帝国主義。日本もその構成国である。「メフィストに魂を売ったファウストのように、アメリカへの従属と依存とを受け入れた」(p18)自身の姿を直視し、このアメリカ帝国にどう乗り、これからどう生き延びてゆくのかが問われる。

THE EMPIRE'S NEW CLOTHES
Paradigm Lost, and Regained
アメリカ<帝国>の現在 イデオロギーの守護者たち
著者:Harry Harootunian、平野克弥(訳)、みすず書房・2014年6月発行
2014年9月12日読了

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