« アメリカ<帝国>の現在 ハルトゥーニアン [読書記] | トップページ | ダックスフントのワープ 藤原伊織 [読書記] »

2014年9月23日 (火)

シャーロック・ホームズの思い出 コナン・ドイル [読書記]

シドニー・パジット氏による挿画とオックスフォード版の充実した解説により、ホームズの世界を思う存分楽しめる一冊となっている。
スピンオフ作品は数あれど、やはり本家は何かが違う。
本書の中のお気に入りを挙げよう。

『The Masgrave Ritual マスグレーヴ家の儀式』
冒頭、ホームズの有名な奇癖を並べた後、ホームズ自身の学友により持ち込まれた事件が展開される。
男女の痴情のもつれと金銭欲が招く悲劇。これだけなら平凡な探偵作品だが、イングランド史にまつわる伝承と身近な推理ものが混交し、本作を傑作へと昇華させている。

『The Final Problem 最後の事件』
スイスの美しい描写とモリアーティ教授の不気味さと恐怖が対照をなす。
自らの最期を悟り、友人ワトスンを安全な場所へと向かわせた直後のホームズの姿(p543)は清々しく、そして美しい。
推理性の皆無、必然性の脆弱さなどが批判される作品だが、それでも、男の最期を飾る物語としてすばらしい叙事詩だと思う。

1927年のシンポジウムにおけるドイル氏の講演『いかにして私は本を書くか』(p665、付録二)も参考になる。

訳者あとがきにはドイル氏の家庭事情と作品の関連性が詳しく記述されるが、研究者層ならともかく、本書の読者層には必ずしもマッチしないと思う。少し残念だ。

THE MEMOIRS OF SHAERLOCK HOLMOES
シャーロック・ホームズ全集④
シャーロック・ホームズの思い出
著者:Sir Arthur Conan Doyle、小林司、東山あかね(訳)、河出書房新社・2014年6月発行
2014年9月23日読了

Dscn2295

« アメリカ<帝国>の現在 ハルトゥーニアン [読書記] | トップページ | ダックスフントのワープ 藤原伊織 [読書記] »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134563/60363743

この記事へのトラックバック一覧です: シャーロック・ホームズの思い出 コナン・ドイル [読書記]:

« アメリカ<帝国>の現在 ハルトゥーニアン [読書記] | トップページ | ダックスフントのワープ 藤原伊織 [読書記] »

フォト

他のアカウント

おすすめ本

見て下さいね!

  • BMW Japan
    愛車の2001年式E46 320i Mスポーツは快調ですが、E90 3シリーズクーペも魅力的です! 335i、誰か買ってくれないかな~~
  • United Nations Peacekeeping
    現代のアメリカ帝国の一方的かつ傲慢な「強者の論理」がまかり通る世の中ですが、国連経済社会理事会はまだまだ機能しています。そしてPKOの理念もまた!
  • 『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版
    日本に存在しないものの一つが「クオリティ・ペーパー」だ。この大陸欧州(コンチネンタル)の知性が、日本語で堪能できるのです! インターネッット様々ですね。
  • BBC NEWS | News Front Page
    英連邦の残滓は資産でもあります。日本のメディアにほとんど現れることのないアフリカ、南アジアの記事が豊富です。
無料ブログはココログ