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2015年2月17日 (火)

イギリスと日本 東アジアにおける二つの帝国 後藤晴美  [読書記]

1.第一次世界大戦期における日英関係の冷却
・揚子江地域はイギリスが伝統的に自らの勢力圏と考えてきた聖域。日本の二十一箇条の要求は山東半島だけでなく、揚子江地域の利権に関する条項を含み、イギリスの不興を買った。
・さらに第五号条項には政経軍への日本人顧問の招聘、日中合同警察、兵器の日本からの供給など、当時の帝国主義世界の常識からしても過剰な「希望」が含まれており、日本の意図に関するイギリスの疑惑を招いた(p214)。
・戦闘への参加においても、まるで中立国のように振る舞い、自ら獲得できるものにのみ興味を示すように同盟国イギリスには映った。さらに敵国ドイツへの同情すら示され、強い反感を招く(p215)。
 →現在の対米同盟にも、このような姿勢は見られないか?
・インドの独立運動に対し、あからさまに擁護する姿勢を示す日本。東京へ亡命・潜伏中の政治犯引き渡し要求に際しても、右勢力の反対運動に政府高官が理解を示すなど、インド帝国の宗主、イギリスを逆なでする(p217)。

2.パリ講和会議、ヴェルサイユ条約
・国際社会の秩序や規範は絶対不変のものではなく、国際会議の場で、感情を持つ人間の交渉に経て作り出されるもの(p220)。国際的協力によって、より良い世界を築こうとする19世紀以来の理想主義の具現化。米英の模索する新しい国際体制への理解が日本の外交当局には欠落しており、パリ講和会議へは「戦利品」獲得を主眼に臨むこととなった(p221)。
・東アジアと太平洋の問題はワシントン条約へと持ち越される。

3.ワシントン条約、日英同盟破棄
・大戦中の日本海軍の活躍は大いに評価されるようになったものの、イギリスにおける日本との同盟に関する見方は様々。イギリス海軍省は今後の太平洋やインド洋での戦闘に、同盟国の日本海軍にその役割を期待する。一方でイギリス外務省では、日本との結びつきはイギリスの利益をもたらさないと考える者が大勢を占めた。日英同盟が日本の中国への進出を後押しする機能しか果たしていないと問題視するアメリカとの関係、カナダによる反対、なにより、揚子江地域における日英間の経済競争の激化等から、同盟の破棄が優勢となる(p222)。
 →現在の米海軍と海上自衛隊の良好な関係と、外交・経済面での米中関係の緊密さを見ているようだ。
・1921年より開催されたワシントン会議で、アメリカの主導により日英同盟は破棄され、英米仏日の四国条約が調印される。
・1922年の段階では中国ナショナリズムの急激な台頭は予想外であり、大国間の協調による中国の現状維持が達成されたとのイギリスの認識。
・一方でアメリカが国際連盟加盟を拒否して以来、1920年代を通して英米関係は冷却したため、突出する日本へ共同して圧力をかけることは行われなかった(p225)。
 →その結果が、日本軍部のさらなる増長を招いたとすれば、皮肉ですらある。

4.中国ナショナリズムと日英
・1920年代の上海において、中国人のストライキに対して日本とイギリスの経済界の利害は一致した。外交ルートよりも経済界首脳の協力姿勢が目立つ。
・ジャーディン・マセトン商会等のイギリス経済界の姿勢は徹底している。「中国の親善を軟弱外交で買うことはできず、威信の喪失からは経済的不利益以外の何ものも得られない」として、妥協よりも軍事力の行使を望んだ(p230)。
・1920年代半ば以降の日中軍事衝突、満州事変を受け、イギリスは中国を支援する。よって中国ナショナリズムの「第一の敵」はイギリスから日本に変化した(p233,238)。
 →これが今日まで続くのだからたまったものではないな。


イギリスと日本 東アジアにおける二つの帝国
イギリス帝国と20世紀 第3巻「世界戦争の時代とイギリス帝国」所収
著者:後藤晴美、ミネルヴァ書房・2006年12月発行
2015年2月16日読了

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