« プラチナデータ 東野圭吾 [読書記] | トップページ | 政党政治と天皇 伊藤之雄  [読書記] »

2015年2月11日 (水)

「彼等」 キップリング [読書記]

1904年当時の最新の文明機械=自動車を駆って、イングランド南部はサセックス州の海岸を行く男。
スピードの緩急を自身でコントロールする楽しみを得られる特権階級でもある。
騎馬道を上り下り、エリザベス朝時代の美しい石館にたどり着く。
館と庭園を駆ける子供たちの悪戯に満ちた仕草は、かつて子を持った身には懐かしくもあり、館の盲目の女主人とともに愉悦のひと時を過ごす。

・美しい声の曳く水脈を静寂はゆっくりと閉ざした。(p297)
・視覚的日常とは異なる、盲人の知覚的世界。見えざる"色"の世界の描写も素晴らしい

ふたたび、みたびの訪問。
姿を見せない幼子たち。そのひとりから掌に「小さな優しい接吻」(p320)を受けた刹那、男は一切を悟った。
幼子は、死に別れた愛娘。「彼等」の正体も、本当は最初からわかっていたのだ。
「ありがとう」
子を持たなかった夫人との時間は、スピード時代の車窓の風景のように過ぎ去ってゆく。
男はキプリング自身の投影だ。

イギリス人初のノーベル文学賞の後期短編は、文章が練りに練られている。
著者初期のインドもの短編は魅力的だが、本作も行間を"読み取る"愉しみに浸ることができた。

'They'
「彼等」
怪談の悦び 所収
著者:Rudyard Kipling、南條竹則(訳)、東京創元社・1992年10月発行
2015年2月11日読了

« プラチナデータ 東野圭吾 [読書記] | トップページ | 政党政治と天皇 伊藤之雄  [読書記] »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/134563/61120237

この記事へのトラックバック一覧です: 「彼等」 キップリング [読書記]:

« プラチナデータ 東野圭吾 [読書記] | トップページ | 政党政治と天皇 伊藤之雄  [読書記] »

フォト

他のアカウント

おすすめ本

見て下さいね!

  • BMW Japan
    愛車の2001年式E46 320i Mスポーツは快調ですが、E90 3シリーズクーペも魅力的です! 335i、誰か買ってくれないかな~~
  • United Nations Peacekeeping
    現代のアメリカ帝国の一方的かつ傲慢な「強者の論理」がまかり通る世の中ですが、国連経済社会理事会はまだまだ機能しています。そしてPKOの理念もまた!
  • 『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版
    日本に存在しないものの一つが「クオリティ・ペーパー」だ。この大陸欧州(コンチネンタル)の知性が、日本語で堪能できるのです! インターネッット様々ですね。
  • BBC NEWS | News Front Page
    英連邦の残滓は資産でもあります。日本のメディアにほとんど現れることのないアフリカ、南アジアの記事が豊富です。
無料ブログはココログ