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2016年9月19日 (月)

藤田嗣治 本のしごと 林洋子[読書記]

本の装幀は、偉大なる芸術家によって、美術品として考案されなければならぬ(p21)。1937年の藤田の言葉である。
本書は、1913年よりパリで活動を始めた彼の一側面、国際性と独自性が、美術品としての本のしごとを通じて深く考察される。
図版多数。ヴィジュル面でも愉しめる一冊となっている。

・1920年という未曽有の国際交流の時代(p56)、藤田は「乳白色の下地」と線描が特徴の裸婦表現を確立し、同時期に木版、銅板による雑誌の挿絵、豪華本の装幀・挿絵を手掛ける。複数のフランス人作家のジャポニスム小説をはじめ、「日本昔噺」(p60 1923年)、「日本美術展覧会カタログ」(p58 1929年)など、モノクロ、カラーとも実に魅力的だ。
・アール・デコブームと相まって、テキストとイメージのレイアウトの実に美しいこと!(p80他)
・日本では平凡視される浮世絵や「ゲイシャの唄」も、フランスでは芸術に昇華されるんだな(p94)。

1931年の満州事変と1933年の国際連盟脱退は、ジャポニスムを憧れから脅威の代名詞へと変貌させる(p142)。私的な要因もあり、藤田もまた帰国せざるをえなかった(p142)。だが「本のしごと」の観点からは、婦人誌「婦人之友」、高級グラフ誌「スタイル」「ホーム・ライフ」、豪華本の装幀など、1930年代における東京における印刷メディアでの幅広い活動こそが、パリでの実績にリアリティを持たせ、戦争画の広範な人気の下地を準備することとなる(p229)。

日本とフランスの愛書文化に通じ、装幀を実践した稀有なる存在(p229)とは、正鵠を得ているな。

藤田嗣治 本のしごと
著者:林洋子、集英社・2011年6月発行
2016年9月19日読了

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