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2016年9月 9日 (金)

土漠の花 月村了衛 [読書記]

アフリカの夜の深さ。そしてその闇の深さ。
ジブチ国際空港に治外法権を確立して活動する「派遣海賊対処行動支援隊」の陸自・中央即応集団からなる警衛隊が、思わぬ形でソマリア部族抗争に巻き込まれ、小部族長の娘を護りながらすさまじい死闘を何度も繰り広げる。巻末の解説にある如く、読むことをやめられない冒険活劇だ。

・銃撃はともかく、巨大なナイフで生首を切断される、巨漢黒人に囲まれてなぶり殺されるなど、一般の日本人、そして日本国防衛を想定した自衛官には衝撃的な出来事から逃避行は始まる。

・設定のためとはいえ、冒頭の津久田の姿には違和感を覚えるな。後半では凄腕スナイパーの腕を存分に披露するわけだが、「人を殺すために入隊したわけじゃない」(p80)と二等陸曹に抗弁させるのは無理を感じた。

・「眼窩の奥に土を詰め、長年地中にあって……」(p133)を目の当たりにしての、アスキラの悲痛な叫びは痛々しく、先進国に蹂躙されるアフリカの現実は哀しい。

・確執を抱えた由利と梶原。ラスト直前の陽動作戦は清々しく悲痛だ。中盤の由利の言葉も印象に残った。「おまえも自衛官だろう。だったら勝手に死ぬ自由なんてないと思え」(p180)

・「彼らの痛み」(p193)を知った友永陸曹長の思いは、全日本人に同じ思いを馳せさせるものだろう。そして東アフリカ安定のために政治家の選び取った選択。それはアフリカの未来を築くものだろうか。。。

月村了衛といえば2001年のアニメ「NOIR」の原案・構成・脚本を手掛けた人であり、その作品世界は深く印象に残っている。先進国と第三世界の接触、人間の闇、そして「花」。少々の違和感はともかく、彼の作品に通底する世界観を本作でも存分に楽しめた。


土漠の花
著者:月村了衛、幻冬舎文庫・2016年8月発行
2016年9月8日読了

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