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2017年3月30日 (木)

樽 F.W.クロフツ [読書記]

1910年のロンドン埠頭で発見された、樽に詰められた女性の死体。金貨、謎めいた手紙、深夜の探索、"消える"樽。次々と判明する事実は混迷の度を増し、ロンドンとパリをまたがる捜査網は行き詰まるが、鉄の意志を持った刑事たちの執念がひとつずつ結実する……はずであった。

スコットランドヤード、パリ警視庁、弁護士、私立探偵へと担い手が変遷し、少しずつトリックが解き明かされてゆく様は、やはりミステリーの王道だ。

・トロカデロ宮、オルセー河岸駅、繁栄するフォリー・ベルジェール、荷馬車と自動車が混在するオスマン大通り。いまでは失われたパリの光景は実に魅力的だ。

・「そこにいるのはわたしではなく、自分自身ではない誰かを見ているような妙な感覚」(p411)、犯罪に身を染めるとき、自身に悪魔が乗り移る感覚がここに顕れている。

・ラスト付近のスピーディーな展開は、急転する舞台と相まって、読書の快感を感じさせてくれた。

1910年の古き良きパリと霧の大都市ロンドンにわが身を置き、雑踏の中で謎を解き明かす感覚を存分に愉しめた。これを傑作というのだろう。

THE CASK

著者:Freeman Wills Crofts、霜島義明(訳)、東京創元社・2013年11月発行
2017年3月28日読了

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