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2017年4月10日 (月)

四都市物語 海野弘 [読書記]

1920年代におけるパリ、ベルリン、モスクワ、ロンドンを扱った本書は、著者独自の空間への視線、特にアンダーグラウンドの面から都市を俯瞰する内容となっている。

・フランス第二帝政期のパリ・オスマン大通りが、1920年代になってやっと完成したとは知らなかった(p17)。

・ディアギレフのバレエ・リュス。彼らがパリを席巻した背景に、革命により故郷を追われた多数のロシア人亡命者が深く浸透させたロシア文化(レストラン、エンターテインメント)がある。そのパリの亡命ロシア人の身分はジュネーヴ、すなわち「国際連盟の発行したパスポート」によって保証されていたそうな(p42)。

・キャバレー、地下世界、デカダンス、ダダ。敗戦後の混乱とと狂乱物価に翻弄された1920年代のベルリンをを濃く特徴づける要素たちも興味深い(p120)。

・ティー・ダンシング、フォックス・トロットにタンゴ(p238)。ジャズを「かなりいろいろなものを含む、ジャジイなもの」とのしての解釈が、すなわち1920年代のジャズ・エイジである(p235)。

・豪華ホテル、国際豪華寝台列車、オーシャン・ライナー。グローバル化の進む1920年代、「エジプトのプリンスとパリジェンヌがロンドンのホテルで最高のフランス料理を食べ、最新のアメリカのジャズを聞きながら、東と西の、夫と妻の終わることのない葛藤を繰り広げているのだ」(p260)。実に面白い時代だったんだな。また、ホテルや汽車にステノグラファー(速記者)がいて、口述筆記させることが可能だったという(p262)。

「二〇年代はこんなふうに、馬鹿げているほど途方もないことが好きな時代であった」(p276)
温故知新。戦間期にあって現代都市生活の原型が形成されつつあった時代を振り返ることは、あらためて現代社会を観ることでもある。
本書に数多く示された文学・芸術作品とあいまって、都市と人、その関係を深く掘り下げる楽しみを知ることができた。

四都市物語 ヨーロッパ・一九二〇年代
著者:海野弘、冬樹社・1979年11月発行
2017年4月4日読了

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