杉浦非水のデザイン [読書記]
グラフィックデザインの黎明期に新しい仕事を切り開いていった杉浦非水の作品が「三越の仕事」「デザインの仕事」「図案集」「非水百花譜」の4章にバランスよく収められている。
・三越呉服店の華やかなポスターと会報誌。和風アール・ヌーヴォーと呼ぶべきか、100年を経過した現在でも古臭さを感じさせないセンスは、やはり本物だ。
・「<美>と<経済>のバランスのうえに成り立つデザインというジャンルの本質」(p79)、顧客の無茶で過大な"要求"と現実的かつセンスある"成果"をどう両立させるのか。広い意味でのデザインの本質を、彼は心得ていたんだなと思う。
・『東洋唯一の地下鐵道上野浅草間開通』(1927年)は何度見ても飽きない。着飾った婦人たちや子供の姿、煙草を手に近づく電車へ目をやる紳士。そしてこの構図。良いなぁ(p86)。
・各種「図案集」も秀逸。アール・ヌーヴォーのみならずアール・デコの風潮を逃さず、日本風にアレンジ。素晴らしい。
本書そのものも美術作品集にふさわしい手触りとなっており、申し分ない。ただ、できればB5ではなく、A4サイズで出版して欲しかったと思う。
HISUI SUGIURA : A PIONEER OF JAPANESE GRAPHIC DESIGHN
杉浦非水のデザイン
パイ・インターナショナル・2014年3月発行
2017年12月7日読了
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